いろはと。

フラフラとなにも決めず流れに身を任せていきてます。そんな適当な生き方が好き。

今日の文学  旅しながら生きてる私の一握りの話

 よいしょって、田んぼの脇に腰を下ろす。朝から畑に行き、一仕事終え

少し疲れた体を休める。さっき昼ご飯をお腹いっぱい食べたせいか、少し眠い。

 


今年は梅雨が長く、7月も折り返し地点なのにまだ続いてる。

雨のせいで、畑の作業が進まない。晴れ間がないせいで、野菜がうまく育っていない。

隣にいる彼は、不安を隠せない様子だ。ケータイを時折みて、どこか遠くを見つめている。

そんな彼を見つめる私。「明日は晴れるといいな」そう心でつぶやく。

 


曇り空の下、少し雨も降っている朝。畑で作業をしていると彼がやってきた。

 


「今日のお昼なんだけど、太田さんが美味しいお好み焼きやさんあるから行こうって。12時半に太田さんの家いこう!」

 

  楽しそうに話す彼。彼は踊ってるような、スキップしているような陽気な話し方をする。聞いていてこっちまで楽しくなる。太田さんは近所に住んでいる、とてもよくしてくれるお父さんみたいな人。時々、私はこの街に心の休暇を求めて足を運んでいる。都会の街で疲れた心や悩みを抱えて。ここでは畑で土を踏みしめたり、自然の中で過ごしたり、新鮮で美味しい野菜を食べたりする。それだけでなんだか元気になってる気がする。今回でここにくるのは3回目だ。私はここにくるたびに太田さんに会っている。名前を覚えていてくれたり、小さな変化に気づいてくれたり、いろんなことを気づかせてくれる。人生の師匠であり、詩人でもある。

 


  彼に分かったことを伝え、  少し会話交わして、また畑作業を進めていく。黙々と作業をしていく時間は自分と向き合うのにもってこいだ。今自分はなにを感じているのか。なにがしたいのか。自分に問い続ける。雨で湿った土のせいで長くつがとっても重い。べっとりと土がくっついで象の足みたいだ。足を振っても落ちない。なんて強力なんだ。

 


  太田さんとは昨日のお昼も一緒にご飯を食べに行っていた。とてもよくしてくれて、友達のようにご飯まで誘ってくれる人なんて私の地元にはいなかった。年齢も私よりふたまわりも上なのに、それを感じさせない心の若さ。そんな素敵人たちに囲まれて生活している彼が、ときどきとても羨ましく思っている。そして、このいい環境をつくれる彼もまた、素敵な人の一人でもある。彼の持つ人徳は私にないもので、嫉妬を隠せない私はまだまだ未熟者だ。

 


♪〜♪〜

彼のケータイがなった。

「あ!やばい!今何時??」

「12時32分だ!!あーやっちゃったよ。」

慌てて電話にでる。太田さんに電話越しでペコペコ謝って、急いでむかう。ケートラに乗り込み「ごめんねー」なんて、焦った顔で笑う彼。田舎道をめちゃくちゃなスピードをだして家に向かった。ちょっぴり怖いと思っていたのは私だけの秘密。

 


  家に着いたら、車で太田さんが待っていてくれていた。

「もう準備いいのか、ゆっくりでいいぞ」

そい言ってくれる太田さん。なんて男前なんだろうか。

準備が整い、急いで「「お願いします」」と二人で太田さんの車に乗りこむ。車を走らせ、お好み焼きやさんに向かう。しばらくわいわいと三人で会話を楽しみながら車に揺られる。

 


お店に着いた。扉がしまっており、中が暗い。車を店の前に横ずけし、太田さんが確認しにいく。

「おー。今日やってかー?」

閉まっているドアをガラガラとあけ中に入っていく。

「すいません、昨日から水道が壊れてて、休みにしてるんです。」

奥で申し訳なさそうに返事をする店主の声が聞こえた。太田さんと店主は知り合いなのか少し話をして、出てきた。お好み焼き食べたかったけど、仕方がない。諦めて、私たちは次の店に行くことにした。

 


  移動中、急に太田さんが話し出した。 おっ、きたぞ、きたぞとおもい、私と彼は太田さんの話に耳を傾けた。

 


「今年鳴くセミはなぁ、まだ平成のセミなんだぜ。セミは土の中に7年いるから、令和7年に初めて令和のセミが生まれるんだ。」

 


「こういう話をさらって言えるって素敵だろ?仕事現場だったり、友達との会話中でもいい。なにか話を持っておく。それが、、、、みそ。」「そうだろ?」

 


太田さんはいつも不思議で面白い話をしてくれる。こうやって急に始まるお話が私は大好きだ。それに、太田さんが話すとしょうもない話もそれとなしにすごい話に聞こえる。それもまた不思議で、大好きな要素でもある。

 


  私は思ったことを言葉にするのが少し苦手で思っていることの20%くらいしか伝えることができない。だから、いつも聞いてばっかだ。話そうとしても、上手じゃないと思っているせいか自信もないし、面白いかなって不安になる。こんな小話ひとつふたつ持っとくと少し自信が持てるかな、なんて考えさせられた。日々の会話がとても勉強になる。

 


そんな話をしてたらあっという間に、次の店に着いた。餃子が有名な中華料理屋さんのようだ。ここも、太田さんがよく行くお店のひとつで、彼もまたよくいくみたいだった。

 

 


   ご飯を終え、家に戻る途中、太田さんがある場所によってくれた。

周りは一面田んぼ。その奥は木に覆われポツンとひとつの空間が生まれている。そんな場所。

 


  よいしょって、田んぼの脇に腰を下ろす。太田さんはたまにポツンと弱音を吐く。そんな弱いところを見せれる太田さんも素敵だ。